幸せな勘違い?2014/01/11 12:06

 大瀧詠一さんの急逝で、ニッポン放送でのドラマ「マイケル・ジャクソン出世太閤記」を思い出す方もいるようなので、少し書いておこう。
 ぼくなんかが知っているのは、巨大な大瀧詠一のごく一部にすぎない、と承知の上だが。

 あのドラマは、ぼくが知る限り、これまでに4回OAされている。
 初回は、編集が間に合わず放送時間を延長してしまった伝説の時。まあ、今となっては「伝説」で済むけれど、当時は大変だったのだ。

 二回目は、当時ロス五輪が開かれていたので、このドラマ素材を使い、さらに架空のスポーツ実況とか現地レポートとかも加え「M・ジャクソン五輪も開かれている」という無茶な設定で放送。
 直接編集に加わってなかった大瀧さんは、聞いて「オーソン・ウェルズになれるよ」と笑ってくれた。
 これはドラマをそのまま使ってないので、見落とされがちな回。

 ……と、ここまでは、拙著「ラジオな日々」にも書いてある。

 三回目が、AMステレオ化の時。元々このドラマはマルチで収録していたので、大瀧さんがステレオに落としたんだと思う。案内役は上柳さんではなかったか? 

 四回目が、マイケル急逝の時。大瀧さんと小林克也さんが案内役をした。
 この時、ぼくが大瀧さんに
「脚本のセリフ、指定した音をすべて生かしているので、凄いと思いました」と言うと、
「ドラマ演出は、脚本を勝手にカットしちゃいけないものだと思っていたんだ」との答えだった。
 実際には、脚本はいろんな都合でカットされる。ぼくはそれを織り込んでやや長めに書いていたのだ。

 この、遠慮というか、勘違いというか、とにかくそれによる「束縛」があの怪作を生むことになったんだと思う。演出的にカットしていいのなら、時間に収まったろうし、面倒な音指定は無視したっていい。
 しかし出来あがったものは、ぼくの脚本をすべて生かした上に、さらに大瀧さんオリジナル・アイデアの音も加えているのだ。
「自らが決めたルールの中で、そこにこぼれるほどのものを盛り込む」。 この前段部分が重要な気がしている。

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