耳で聞く「誰いそ」2006/07/14 01:11

某図書館で、「誰もいそがない町」を、視覚障害者のために朗読図書にしてくれるとのこと。というか、そこでそういうボランティアしてるのが、ぼくの実姉だからですが。電話が来まして、
「あなたの本、読みたいけど、いい?」
「いいよ」
「出版社に聞くより手っ取り早くて、助かったわ」
「ま、身内だからね」
「でね、ついでに、あなたの他の本も全部読んでいいという許可くれる?」
「ついでかい。別に、いいよ」
「でも、あなたの本も特殊なのが多いからねえ。聞きたいって要望があるかどうか・・・」
ほっとけ!・・・ですが、ある意味真実だしなぁ・・・・。

ま、ぼくの本が何かのお役に立てるのなら、嬉しいことです。

朗読2006/04/06 10:30

ラジオで「誰もいそがない町」を朗読してくれるとのこと。
嬉しいですね。
番組名は「童話の散歩道」。

童話なのか? という気もしますが、まあ、そういう部分もあるから、いいんじゃないの。
今回朗読してくれるのは「夢市場にて」。

4月15日(土)16日(日)のどっちか、
下記の31局だそうです。

福井放送  山口放送  新潟放送  長崎放送  和歌山放送 
信越放送  東北放送  四国放送  琉球放送  北日本放送
山陰放送  IBC岩手放送 南海放送   北海道放送 ラジオ関西
山形放送  京都放送  山梨放送  大分放送  秋田放送
南日本放送  中国放送  高知放送 静岡放送  青森放送
熊本放送  西日本放送  北陸放送  ラジオ福島  宮崎放送
RKB毎日放送  

放送時間もバラバラ。
偶然、どこかで耳にするかもしれない。そういうのがいいですね。

エピソード122006/02/13 00:42

「誰もいそがない町」に収められた各編についての、エピソードを書いていく。


まくらの国
・・・実は、ここに書かれているお話は、ぼくにとってはほとんどノンフィクションだ。朝起きるためのこの「おまじない」は、幼い頃、父親が教えてくれたもの。ぼくはとても寝つきの悪い子だったので、いつも布団に入ってから色んなことを考えていた。その中に、そっくりこの物語があった。
つまり、この話はほとんど小学生時代にできていたもの。作家になったぼくが付け足したのは、最後の三行だけなのだ。


ガラスの魚
・・・これも気にいっている話。このタイトルのイメージを頭の中で持て遊んでいるうちに、するすると物語がよどみなく滑り出てきた。70年代後半~80年代に、SF私小説マンガとでもいうようなジャンルで多くの名作があった。実は、ああいうイメージで書いた。


以上で、すべてのストーリーについて触れてみた。

エピソード112006/02/07 01:26

「誰もいそがない町」に収められた各編についての、エピソードを書いていく。


星泥棒
・・・夜。帰り道。ふと空を見上げて、
「オリオン座だ」と立ち止まることがある。都会でも、オリオン座の三つ星なら、ハッキリ見える。ここまではいい。自分が星座に詳しいようで、ちょっと嬉しくなる。が、それ以外がまったく駄目。
子供の頃から、何度空を見上げて、星座図鑑を眺めても、夜空に美しい図形なんか見えやしないのだ。自分の感性の鈍さにガッカリする・・・というわけで書いたのが、この話。

消えてしまったものは
・・・かつて、草野球をしていると、ボールがなくなることがあった。別にうっそうと草が繁るジャングルでやってるわけでもないのに、それが見つからない。飛んでいった方向を推測して、(自分としては)かなり論理的に探しても、見つからない。
そういった経験はないだろうか?あったなら、このストーリーに共感してもらえるかもしれない。


てんびんの日
・・・蝉は「7年間土の中にいて、最後の一週間地上に出るだけ」という。ならば、実は蝉というのは「土の中の昆虫」と見るべきではないか?だって、その生涯は圧倒的に、土の中で過ごす期間の方が長いのだ。
人の場合はどうか? あなたが故郷で過ごした年月の長さは?いまいる町で過ごした長さは?


(続く)

エピソード102006/01/24 14:58

「誰もいそがない町」に収められた各編についての、エピソードを書いていく。


方程式の解法
・・・ぼくは中学生レベルまでの、数学の方程式が好きだ。まあ、少し悩めば解けるレベル(今じゃ、解けないと思うけど)。数字と記号だけで世の中のすべてを説明してくれているようで、好きだった。信じられないことに、あの頃、好きな科目は数学だったのだ。
もちろん、高校になると、歯が立たなくなったのだが。



クッキーの型のように
・・・もうとっくに亡くなったぼくの祖父や祖母のことは、いまだに覚えている。その祖父や祖母にも、きっと誰か忘れられない人の記憶があったんだろうな、と思う。それはもちろん、ぼくのまったく知らない人だ。けれどなんだか、まるっきり100%関係ない人とも思えない。
以前から、こんなことを時々思っていた。そんな時、知り合いの飼っていた猫が死んだ。その人が落ち込んでいたのをなぐさめようとして、ふと「クッキーの型」のイメージが浮かんだ。
長い間思っていたことが、このキーワード一個で一気に作品になった。自分でも気にいっている話。


彼がいなくても都会は
・・・自分の中では忘れていた作品。元になった原稿すべてを読んだ編集者が「あの話、入れましょうよ」と言った。「どんな話?」「ほら、小さくなっちゃうの」「え?」
ひどいもので、自分で書いておきながら覚えていない。で、編集者が、こうなって、ああなって・・・最後はこうなる話、と説明してくれた。聞き終えたぼくは、
「おお、いい話じゃないですか」
と感想。
もちろん編集者に、
「あんたが書いたんでしょ!」
と突っ込まれたが。


(続く)