エピソード112006/02/07 01:26

「誰もいそがない町」に収められた各編についての、エピソードを書いていく。


星泥棒
・・・夜。帰り道。ふと空を見上げて、
「オリオン座だ」と立ち止まることがある。都会でも、オリオン座の三つ星なら、ハッキリ見える。ここまではいい。自分が星座に詳しいようで、ちょっと嬉しくなる。が、それ以外がまったく駄目。
子供の頃から、何度空を見上げて、星座図鑑を眺めても、夜空に美しい図形なんか見えやしないのだ。自分の感性の鈍さにガッカリする・・・というわけで書いたのが、この話。

消えてしまったものは
・・・かつて、草野球をしていると、ボールがなくなることがあった。別にうっそうと草が繁るジャングルでやってるわけでもないのに、それが見つからない。飛んでいった方向を推測して、(自分としては)かなり論理的に探しても、見つからない。
そういった経験はないだろうか?あったなら、このストーリーに共感してもらえるかもしれない。


てんびんの日
・・・蝉は「7年間土の中にいて、最後の一週間地上に出るだけ」という。ならば、実は蝉というのは「土の中の昆虫」と見るべきではないか?だって、その生涯は圧倒的に、土の中で過ごす期間の方が長いのだ。
人の場合はどうか? あなたが故郷で過ごした年月の長さは?いまいる町で過ごした長さは?


(続く)

エピソード122006/02/13 00:42

「誰もいそがない町」に収められた各編についての、エピソードを書いていく。


まくらの国
・・・実は、ここに書かれているお話は、ぼくにとってはほとんどノンフィクションだ。朝起きるためのこの「おまじない」は、幼い頃、父親が教えてくれたもの。ぼくはとても寝つきの悪い子だったので、いつも布団に入ってから色んなことを考えていた。その中に、そっくりこの物語があった。
つまり、この話はほとんど小学生時代にできていたもの。作家になったぼくが付け足したのは、最後の三行だけなのだ。


ガラスの魚
・・・これも気にいっている話。このタイトルのイメージを頭の中で持て遊んでいるうちに、するすると物語がよどみなく滑り出てきた。70年代後半~80年代に、SF私小説マンガとでもいうようなジャンルで多くの名作があった。実は、ああいうイメージで書いた。


以上で、すべてのストーリーについて触れてみた。