エピソード92006/01/22 22:40

「誰もいそがない町」に収められた各編についての、エピソードを書いていく。


世界で一番の木
・・・これは最初の放送時、オンエア直後に「原作を教えてください」と問い合わせがあった作品だ。タクシーの中で聞いていて、気になってしかたなく、降車してすぐ電話したという。
作者冥利につきる。電話の相手が若いサラリーマン風の方だったと聞いて、ぼくが仮想リスナーにしている相手にちゃんと届いてるという自信をもった。自分でも気にいっている。
この本の中では、かなり詩的・絵本的な作品のひとつ。

風船の墓場
・・・ぼくはずっと不思議でならなかった。かつてはイベント時とかに、大量の風船を空に放った。あれは、どこまで飛んでいくんだろう?と。
多くは割れたり、地上に落ちたりするだろうが、中にはふわふわと飛び続けるものもあるだろう。それは、どこへ・・・?
子どもの頃のそんな疑問が、大人になってひょこっとこんな話にまとまってしまうのが、我ながら面白い。


ちょっと海へ
・・・今回この本をまとめるにあたって、「海」をモチーフにした作品が多いことに気がついた。海の近くで育ったせいか、ぼくは海が好きだ。サーフィンやヨットをするわけではない。そういった、いわゆる「海の男」ではないが、でも好きだ。
読者へのメッセージということ以前に、ぼく自身が、この乾いた都会の中で、海を求めてるのかもしれない。



(続く)

エピソード62006/01/04 00:09

「誰もいそがない町」に収められた各編についての、エピソードを書いていく。


春風のドレス
・・・これは、かつて「プリズム・ショット」という本に入れていたストーリー。大変評判がよかったものなので、もう一度陽の目を見せてやりたくて再録した。自分でも、どうしてこんな美しい話が書けたのか、今となっては、さっぱりわからない。
むしろ、書いてから時間が経ったために、たんなる一読者としてこのストーリーを楽しんでいる自分が、面白い。


知らなければならないこと
・・・当初ラジオ番組用に書いた時はもう少し長く、遊びの文章があった。本に入れる時その部分をカットしたので、メッセージ色が強くなってしまった。
が、まあ、これはこれでいいのではないかと思っている。


拡大季節会議
・・・ぼくはいま、落語の「まくら」だけを紹介するという一風変わった番組をやっているが、この話は、まさに「まくら」の小噺かもしれない。なんとものんびりとしたバカバカしい話だ。
美しいストーリー中心の本に、どうしてもこういう話も入れたくなってしまうのがぼくの特徴。これをどう思うか、人によって評価が分かれるのだろうが・・・。


(続く)

エピソード32005/12/30 11:01

「誰もいそがない町」に収められた各編についての、エピソードを書いていく。


夢市場にて
・・・「怖い夢」を見る方は多い。よく、そういう話はきく。だが「可笑しい夢」というのを見る方はどのくらい、いるのだろう? ぼくは、夢の中で笑い、その自分の笑い声で、くくく・・・と笑いながら目がさめるという経験がある。何度も。すごく面白いコント的な夢を見るのだ。
これって、みんなあることなんだろうか?

衝突回避運動理論
・・・たまに、お互いが避けようとする方向が同じで、人とぶつかった経験は誰にでもあるだろう。右に、左に・・・と何度か避けようとして、それがことごとく同じ方向になってしまう。
あれは不思議な経験だ。お互い「へへへ・・・」なんて照れ笑いをするのだけど。その時の不思議感で、このストーリーを書いた。


高い高い木のてっぺんで
・・・これはストーリーとも、エッセイともいえないヘンな話。(自分で書いていて、なんだが)ぼくとしては、たとえば、NHKの「みんなの歌」みたいな、歌詞とアニメーションで表現する世界をイメージしつつ、書いたのです。


(続く)

エピソード22005/12/29 01:37

「誰もいそがない町」に収められた各編についての、エピソードを書いていく。


きみが眠りにつくと
・・・これは人気の高いストーリーで、実は自分でもとても気に入ってる。「海」をこういうモチーフで扱った作品は、ぼくが知っている限りで2つあった。よって、先行する2作品とは違う展開になるよう、気をつかって書いたのを憶えている。ところが、出版が決まったあと、別の海外作品で、やはり「海」をこういうモチーフに使ったものを発見した。
面白いものだ。時代も、国も超えて、人は似たような発想をするものだ。


うぼつて
・・・以前住んでいたマンションの敷地内に小公園があって、そこに鉄棒があった。ある日ぼくは、それをつかみ「えいっ」と体を浮かせてみて、愕然とした。ただ体を支えるだけで、腕がプルプル震えるのだ。子供の頃は、自分の体重を支えるのなんて、どうってことなかったのに・・・・。
と驚いたことから、作った話。


地下鉄の出口で
・・・「虎ノ門」駅は、けっこう何度も利用するのだが、いまだに、階段をうねうね回っていると、思いもしない地上に出て、ビックリすることがある。
そんな思いから作ったストーリー。読者カードで、この話がいいという意見もあったようだ。


(続く)

エピソード12005/12/27 21:46

「誰もいそがない町」に収められた各編についての、エピソードを書いていく。


エレベーターが来ないわけ
・・・並んだエレベーターの、あの不可解な動きについては長年不思議だった。
このストーリーによってそれが科学的に解明できた、・・・とは言わないが、少なくとも心情的には解明できたかもしれない。
この話を読んだTFMの女性ディレクターは「今までウチのエレベーターにイライラしてたけど、これで怒らなくなった」と言ってくれた。ま、事態の解決にはなっていないのだが。

簡単で必要な「答え」
・・・このストーリーは、小さい子どもや赤ちゃんを持つ若いママに評判がいいようだ。「何度も読み返してしまいました」という感想をいただいた。
なお、このタイトルは、ぼくの大好きなS&Gの「簡単で散漫な演説」という曲のタイトルにヒントを得ている。内容は関係ないけど。

彼女のコンプレックス
・・・「花の名前を覚えられない女性」と「車の名前を覚えられない男性」が、出てくるストーリー。実は、その両方ともぼくのコンプレックスでもある。


(続く)