これはみんな、きみの話12011/07/29 16:40

ずいぶん久しぶりに、この連載を再開する。「誰もいそがない町」という本のことだ。2005年にポプラ社から出版された。
これまでの経緯を、このブログを遡って読んでもらえばわかるが、長い助走期間を経ての出版だ。そしてついに大ヒット……となればドラマチックなのだが、現実はそう甘くなかった。

しかしそれでも、この本を愛する人があちこちにいて、その後もずっと忘れないでいてくれることを、のちに知る。断片的だが、いくつか記しておこう。

ケータイ・サイトの女性編集者が、「あの本みたいなショートストーリーを連載しませんか?」と声をかけてくれた。そこで、まだ本にしていない話と、新作を交えながら連載した。それが「YUBIO」というケータイサイト。ここで50本ばかり連載した。

ケータイ連載だと、読者の反応はすぐにメールで返ってくる。見せてもらうと、
「普段は本なんて読まないけど、ケータイだから読んでみました。面白かった」
というものが多かった。中に、「精神的に辛い状況だったけど、死ぬのはやめようと思った」という内容のメールが一通あって、驚いた。ぼくの書いたものが、たった一人でも誰かの命を救ったのなら、作者冥利につきる。
「ああ、こういう人たちに届けば、ぼくのショートストーリーは受け入れられるんだ」
と思った。
だが残念ながら、こういう人たちはふだん本を読まない。書店にも行かない。行ったとしても、膨大な本の山の中からこの小さな一冊を探し出すのは困難だろう。

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